「龍の散」商標権侵害及び不正競争係争案

審理機関：上海市浦東新区人民法院

審判結果：権利侵害者に対して商標権侵害および不正競争行為の停止と、202500人民元の損害賠償および合理的な費用の支払いを命じた。

あらまし：

権利者龍角散株式会社（以下、「龍角散」）は、のどの薬に特化した製薬会社で、主な製品は、のど薬、のど飴、服薬補助用ゼリーなどです。権利者はのど薬「龍角散」を基に、龍角散のどすっきり飴シリーズののど飴商品を開発し、乾燥したのどに潤いを与える効果で消費者に広く支持されています。龍角散は早くも1997年に中国で第30類「キャンディー」などの商品で「龍角散」第1090265号「龙角散」、第1090266号「龍角散」の商標登録を出願しており、継続的に使用され高い知名度を得ています。

権利者である龍角散は近年、市場でその商標や製品の包装、表装をコピー、模倣した「龍の散」キャンディー製品が販売されていることを発見しました。調査の結果、権利侵害者である杭州禾璽実業有限公司が第30類キャンディーなどの商品で「龍の散」商標を出願し、さらに龍角散のどすっきり飴の包装、表装にきわめて近似した商品包装で意匠特許を出願したことを発見しました。

三友の弁護士は権利者の代理として、権利侵害者が出願した意匠特許を無効にし、権利侵害者が出願した商標「龍の散」に異議を提起し、かつ権利侵害行為に対して行政に訴え商標権侵害と不正競争の訴訟を起こしました。

第一審法院は審理のうえ、権利侵害者が「龍の散」ロゴを使用した権利侵害製品を生産、販売する行為は商標権侵害に該当し、権利者の製品表装は一定の影響力を持つ表装であり、権利者の一定の影響力を持つ表装製品と近似する表装を権利侵害者が生産、販売することは不正競争に該当すると判断し、杭州禾璽と福建の某公司に商標権侵害と不正競争行為の停止、影響の排除、権利者への20万元の連帯損害賠償と合理的な費用の支払いを命じ、また上海の某コンビニエンスストアに対し2500元の損害賠償と合理的な費用の支払いを命じました。

典型的な意義：

商標権侵害や不正競争の案件では、権利侵害者が同時に権利者の商標を悪意で登録したり権利者のデザインを意匠特許として出願したりして、その侵害行為を「合法化」しようとすることがよくあります。類似の権利侵害案件について、悪意で登録された商標、意匠特許及び権利侵害行為に対して権利者は権利維持の包括的な戦略を策定する必要があり、一方で、権利侵害側の「法的権利」を除去することでその権利侵害の抗弁を回避し、また他方で、権利侵害調査をさらに実施して関連する権利侵害行為、権利侵害規模などの証拠を適時に保全する必要があります。権利維持の戦略に関しては行政による権利確定、行政による差し止め及び権利侵害訴訟を総合的に考慮することができます。行政による権利確定において商標の近似性や外観の近似性の判断はその後の商標権侵害や不正競争の判断に役立つ一方、行政による権利確定手続きで得られた有利な決定は、権利侵害側の悪意を証明することにもなり、権利侵害案件での損害賠償請求にも役立ちます。