2025/4/1 14:40:51
2025年3月13日、中華人民共和国国務院は「国務院による対外知的財産権紛争処理に関する規定」(以下「本規定」)を公布した。
本規定は、中国企業の対外輸出?投資の増加、および対外開放の拡大と外資企業の中国への投資促進という二重の背景の下で制定された。現在の世界情勢の変化に伴い、中国企業が「海外進出」する過程で知的財産権紛争に直面するケースが増加し、国際貿易摩擦も激化している。本規定は、一方で中国の公民および企業組織が対外知的財産権紛争を適切に処理することを指導?支援し、他方で中国で事業を展開する外資企業の合法的権益を保護することを目的としている。本規定は「双循環」という新たな発展モデルを支える法的保障ともなっている。
本規定は2025年5月1日に正式に施行される。施行を目前に控え、本稿では本規定の主要なポイントを解説し、中国企業および外国企業の視点から施行後の影響について分析する。
I. 主要なポイントの解説
政府の職責の明確化
第2条から第6条では、対外知的財産権紛争処理における「中央多部門協力+地方政府の協力」という管理体制を確立し、国務院の知的財産管理部門および商務主管部門の主導的役割を明確にしている。また、地方レベルでは、県級以上の地方政府とその関連部門が具体的な紛争処理を担当する。
知的財産権に関する政府サービスの構築
第4条および第5条では、国務院の知的財産管理部門や商務主管部門が、海外の知的財産法に関する広報およびリスク警告メカニズムを構築することを求めており、国内の公民や組織に対して適切なコンプライアンス指針を提供することを目的としている。第6条では、国務院の関連部門が知的財産権紛争の処理プロセスをさらに細分化し、国内の公民および組織に対して権利保護の支援を行うよう求めている。
多元的な紛争解決メカニズムの構築
第7条では、新たに商事調停機関や仲裁機関を対外知的財産権紛争の解決に導入している。これは、シンガポール国際調停センター(SIMC)の成功事例とも呼応している。訴訟と比較して、調停や仲裁は費用が低く、解決までの期間も短いため、当事者の時間とコストを節約することができる。
法律サービス機関の国際化
第8条では、法律サービス機関の「海外進出」を奨励し、海外市場での支店設立を推進することを求めている。この措置により、国内の公民や企業が海外でビジネスを展開する際に法律支援を受けやすくなり、中国の知的財産権保護のイメージ向上にも寄与する。
業界内の知的財産権支援メカニズムの探求
第9条では、知的財産権保護のコストを削減するために、関連保険業務の展開や権利保護互助基金の設立を奨励している。また、第10条では、商工会、業界団体、越境ECプラットフォームなどの組織が対外知的財産権保護支援プラットフォームを構築することを奨励し、法律相談や権利保護戦略の指導を提供することで、業界全体のイメージ向上と国際競争力の強化を目指している。
II. 中国企業への影響
中国企業にとって、本規定は国際化の推進における重要な制度的保障となる。
まず、政府、社会、業界の多様な支援を通じて、企業は海外の知的財産権情報やリスク警告をより迅速かつ包括的に入手できるようになり、知的財産戦略の早期策定やリスク回避に役立つ。
また、多元的な紛争解決メカニズムと専門的なサービス機関の支援により、企業は対外知的財産権紛争に直面しても、より冷静かつ効率的に対応できるようになり、紛争解決の負担とコストを軽減できる。
さらに、権利保護互助基金や保険業務の発展により、企業の知的財産権保護に経済的な支援が提供される。
III. 外国企業への影響
外国企業にとって、本規定の以下の条文に注意が必要である。
第7条:今後、越境知的財産権紛争の解決方法が増え、多国間の法律適用が関わる可能性があるため、調停、仲裁機関、または司法手続きを通じて解決する必要があり、より複雑なコンプライアンス管理が求められる。
第12条:中国国内での文書送達や証拠収集を行う場合、中国の法律規定を遵守しなければならない。そのため、中国の法律に精通した法律サービス機関に依頼することが推奨される。
第14条:中国企業との知的財産権ライセンス契約を締結する際、外国企業は中国企業と対等な立場で交渉し、許諾する知的財産を双方の合意のもとで決定する必要がある。また、外国政府が中国企業に対して差別的な知的財産権保護措置を講じているかどうかを注意深く確認し、中国政府が発表する対抗措置リストや関連政策を追跡し、適切に対応することが求められる。
第15条?第16条:外国政府の知的財産権差別的制限措置に協力した場合、企業は「知的財産権反外国差別措置リスト」に登録される可能性があり、中国国内での取引制限、資産凍結、入国禁止などの対抗措置を受ける可能性がある。また、中国の公民や企業から訴訟を起こされ、高額な賠償請求を受けるリスクもある。