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コラム
特許出願の「目覚まし時計」

2018/5/7 11:26:18

特許出願の「目覚まし時計」

特許は、企業の科学技術力の象徴であり、競合他社との勝負の武器であり、個人の昇進評定の有力な資料でもあります。特許出願の土俵では、企業は、様々な理由からすぐに特許出願をすることができないことがありますので、出願人に注意を喚起する「目覚まし時計」が必要となります。これらの締切り点を見たら、特許の出願状況により注意するようにしましょう。

 

「痛点」製品の発表前

なぜ重大発明でないのでしょうか?

歴史的発見があったときは、企業は、そのビッグイノベーションに直ちに特許出願をして保護しなければならないことを当然知っていますが、売れそうな商品を改良するときには、その改良部分を特許で保護することを軽視しがちです。しかし、これらの小さそうな欠点を改良することや、「マイクロイノベーション」と言われるものは、よく言われる「ユーザーの痛点」をうまくとらえることがあり、それが製品を市場で販売することの最終的な成否に影響します。一イノベーターとしては、製品の生産‐販売中に「ユーザーの痛点」を発見‐発掘できたら、すぐにその製品の欠点を補って生産に移すことが特に大事となるでしょうが、このときより重視すべきなのは、改良技術を特許で保護することです。

 

小米は、2017年7月26日に小米5XとMIUI9の新製品発表会で初の人工知能スピーカーを発売しましたが、それに関する意匠特許は、2017年6月30日、つまり、その発表前に出願されたものでした。

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これらの軽視される可能性のあるミニイノベーションについては、製品の発表前に準備しておかなければなりません。

 

他社との勝負のとき

格力と美的、摩拝とofoのように、競争中は誰しもが技術で先んじて相手を制しようとするものであり、技術があってこそ特許の競争でも力をつけることができます。2017年に格力電器が中国初の空調業界の知的財産連盟設立を主導していることからも、同公司が知的財産保護を重視していることが窺えます。

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シェアサイクルの競争においても、他社と自社が互いに追いつ追われつ競り合っているときは、1つの重要な特許技術が勝敗を決することがありますので、一応の調査をしてみると、2社の企業が特許の保護に非常に力を入れていることが分かります。

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(摩拝単車の関連特許出願210件)

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(ofo単車の関連特許出願190件)

 

 

企業の株式上場前

企業が株式を上場する前後には、様々な審査があったり、多くの注目を受けるものですが、特許権侵害訴訟や特許権帰属訴訟などが障害になることもあります。『公司株式公開発行承認―公司株式初公開発行承認』と中国証券監督管理委員会から出されたメインボード、中小ボードへの新規上場承認に関する最新の回答意見では、いずれも中国証券監督管理委員会から発行が承認された日から12ヵ月以内に発行者は株式を発行しなければならないことが明らかに定められています。しかしながら、特許訴訟の期間は数年に及ぶことがあり、その結果も不確かなものですので、上場を承認された企業は、一度侵害が疑われたり、巨額の賠償に直面したら、投資家の信用も揺らぐことになります。特にハイテク企業、中小科学技術イノベーション企業であれば、中核技術に疑いを抱かれたら、致命的なダメージとなりますので、特許訴訟などの不利な要因が障害となることを防止するために、株式上場前に特許による保護を万全なものにしておかなければなりません。

「シェアサイクル1株目」の永安行は、上場前の重要な段階で特許権侵害訴訟に巻き込まれたため、IPOプロセスが一時保留されています。

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2017年4月18日に「固定的なピックアップポイントのない自転車賃貸運営システム及びその方法」(特許出願番号201010602045.8)の特許権者は、その発明特許権が侵害されたとして永安行を提訴しています。

摩拝やofoなどが採用しているドックレスモデルと異なって、永安行の製品にはドックレス公共自転車も含まれるものの、その主な業務は、政府が資金を出して投資したドックありの公共自転車システムの業務で、その事業は全国の200県市余に及んでいます。最も早くドックレスモデルを採用したのは摩拝とofoですが、もしこの侵害が成立するのであれば、現在の市場におけるすべてのドックレスモデルのシェアサイクルは、みな侵害であることになります。しかし、特許権者は「永安行」のみを相手取っており、その最大の理由は、「永安行」が当時株式上場の準備中で、国内で「シェアサイクル1株目」となることを急ごうとしていたためでした。

6月7日、蘇州市中級人民法院から第一審判決が下されて、永安行が勝訴し、特許の障壁が取り払われて、8月17日、永安行は株式上場に成功しましたが、紆余曲折を経た上場への道程であったということができます。

 

製品の輸出前

特許には属地性があるので、もうすぐ輸出しようとしている国で特許出願をしていなければ、その製品は、そこで保護を受けることができず、さらに、競合他社の特許権を侵害するリスクにもさらされることになります。現在、多くの製品が国境を越えて世界の市場へ向かっていますが、製品を外国に売り出そうとする前に関連特許の保護を図っておかなければなりません。

 

小米は、インドへの輸出を始めたばかりの頃、一度障害に見舞われています。2014年12月11日、インドのデリー高等裁判所から、小米がエリクソンの特許を侵害しているとの決定が下されて、インドでの携帯電話の販売を停止するよう小米に差止命令が下され、海外市場の拡大が挫折してしまったことがあります。小米は、その後、携帯電話でノキアと特許提携をしていますが、それは、インドへ輸出する間、特許の障壁に阻まれることとも関係していたものでした。

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統計によれば、十分なパテントプールやクロスライセンスで防御していない場合、携帯電話メーカーは、営業収益の約20%~25%を特許ライセンスのためのコストとして用意しなければならないとのことですが、このようなコストは、国産携帯電話メーカーにとって、海外市場に進出することができても、利益を得るのは難しいことを意味しています。そのため、製品に輸出の計画がある場合は、必ずパテントポートフォリオを構築しておかなければなりません。

 

製品や技術が公知になる前

論文を発表したり、業界会議に参加したり、同業者を参観研修に招待したり、クライアントに技術を提供したり、入札に参加して技術を提供したりするなどといった過程で、技術力を示すために一部の技術的成果を開示することがありますが、そうしたら、同業者が一部の開示された技術からリバースエンジニアリングをして技術全体を知ってしまうことがあります。このため、出願人は、技術的成果や製品が公知になるおそれがあるこれらの活動を行う前に、まず、開示されるかもしれない技術を特許で保護するべきです。 


昇進評定や昇進‐昇給を狙う前

全国の各省には、通常、昇進評定のために加点をする政策があり、エンジニア、医師、教師、教授の昇進評定をする場合、いずれも特許が評価指標として現れますが、そのうち、発明特許の評点が最も高くなっています。

また、1つ又はいくつかの発明があることは、個人の積極的な向上と愛社‐勤勉の象徴でもありますので、昇進評定を求めたり、昇進‐昇給を狙う前には、まず、特許出願に値する技術的成果が自分にあるか否かを見る必要があります。

 

プロジェクトの終了前

各々の課題が終了するときには、研究要員の研究成果がありますが、これは、各研究者の苦労の結晶ともいうべきもので、これらの成果は、多くの場合、特許として具現化させることができます。プロジェクトにおける技術的成果は、職務発明となることがありますが、発明者と創作者は、自分がその特許の発明者、創作者である特許文献に明記して、必要な報奨及び報酬を受ける権利を有します。このため、プロジェクトが終了する前に特許出願をして自分や会社の技術的成果を保護することを忘れないようにしなければなりません。

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中国の特許制度には先願主義が採用されていますが、特許出願をするにも一定のタイミングを把握する必要があります。ある製品は、構造図面ができたら、既存の理論から実施可能で出願してもよいと判断されます。ある技術は、中間試験の完了を待ってから出願することができます。またある製品は、試作品、サンプルを製作した後でなければ出願できません。以上に述べた「目覚まし時計」とは、思考の習慣を形成して、これら時間の締切り点を見て、その特許出願による自分の権利利益の保護を考えるよう求めるものです!