2026/1/28 15:53:53
一、改正の背景と立法論理
2025年12月27日、『中華人民共和国商標法(改正草案)』(以下、「改正草案」という。)意見募集稿が正式に公布された。今回の改正は、1983年商標法施行後の5回目の改正であるほか、初めて「修正」から「改正」へとグレードアップし、全9章84条による体系の再構築を通じて、部分的な調整からシステム全体の再構築への転換を実現し、市場主体の商標登録、使用、保護といった全プロセスの最適化を図った。
二、商標登録の要件:体系的な統合と基準の詳細化
1.第二章「商標登録の要件」(第14条~第24条)を新設し、従来分散していた登録要件を集中的に規制し、体系化された登録要件システムを形成し、法律の適用と照会を便利にした。
2.悪意の登録の認定基準を詳細化にし、第18条において、「使用を目的とせず、正常な生産経営上の需要を明らかに超えて商標登録を出願する場合、その登録は許可されない;詐欺又はその他の不正な手段で商標登録を出願してはならない」ことを明確にし、「正常な生産経営上の需要を超える」という表現によって、悪意の買いだめと合法的な登録を精確に切り分け、商標の買いだめ行為への抑止をさらに強化した。
3.著名商標の保護範囲を拡大し、第20条において、同一しない、又は非類似の商品において、他人の著名商標(登録の有無を問わなくなった)を複製、模倣又は翻訳することを禁止し、公衆を誤認させ、かつ著名商標の所有者の利益を損なう可能性がある場合、その登録を許可せず、かつその使用を禁止すると定め、著名商標に対する全方位的な保護を全面的に強化した。
4.商標の構成要素を充実にし、第14条で、従来の構成要素に加えて「動的標識」を新たに追加し、それを商標登録出願の対象とすることができることを明確化した。例えば、ショートビデオプラットフォームの動的ロゴやブランド宣伝におけるアニメーション標識などの新しい形態のブランド標識は何れも法的保護を受けられる見込みがあり、デジタル経済時代におけるブランド表現形式の多様化ニーズに対応するものとなる。
三、権利付与?権利確定手続:効率の向上及び権利保障
1.商標異議申立期間を短縮させ、第35条で、現行法の3ヵ月という異議申立期間を2ヵ月に調整し、権利付与?権利確定手続を最適化し、不要な手続きの遅延を減少させ、商標登録審査の全体的な効率を著しく向上させ、市場主体がより迅速に商標専用権を取得することを支援する。
2.出願人に手続撤回権を付与し、第39条で、「出願人は、商標登録出願及び拒絶査定不服審判請求について、取下げを請求することができる」ことを明確にし、これにより、出願人は実情に応じて手続の継続可否を自主的に決定できるようになり、手続の柔軟性が向上した。
3.電子出願書類の効力を明確化にし、第25条において、「電子データ交換等の方式により記載された内容を有形的に表示でき、かつ随時に取寄せて調査?利用できるデータ電文は、書面形式とみなされる」と定めている。この規定は行政のデジタル化趨勢に応え、出願人により利便性の高い出願ルートを提供するとともに、商標出願の全プロセスのオンライン化を推進し、行政サービスの効率を向上させるものである。と定めた。同規定はデジタル化行政の趨勢に順応し、出願人により利便性の高い申請ルートを提供するとともに、商標申請全プロセスのオンライン化を推進し、行政サービスの効率を向上させる。
4.審査中止ルールを作り、第40条において、「先行権益の確定が、人民法院が審理中、又は行政機関が処理進行中の別の案件の結果を根拠としなければならない場合、通常、審査?審理を中止すべきである」と定め、中止事由が消滅した後に手続を回復する。このルールにより、先行権益の不確定性による審査上の錯誤を回避し、審査結果の合法性と公正性を確保するとともに、後続の行政争議を減少させることができる。
四、商標の使用管理:規範の強化と責任の明確化
1.誤認を生じさせるような使用行為を厳しく懲罰し、第56条において、「公衆を誤認させる方式で登録商標を使用する場合、商標法の執行を担当する部門は期限を定めて是正を命じ、期限を超えても是正をしない場合は5万元以下の罰金を科し、情状が重大な場合は国務院商標管理部門がその登録商標を取り消す」ことを明確にし、「是正命令→罰金→取消し」という段階的な罰則によって、商標権者が規範に沿って登録商標を使用することを促し、市場秩序と消費者の権益を守る。
2.行政機関に対し自主的取消権を付与し、第56条では、「登録商標が、その使用許可商品の通用名称となった場合、又は正当な理由なく3年間継続して使用されていない場合には、国務院商標管理部門は当該登録商標を取消すことができる」と定めた。この修正により、「商標の使用」の方向性を強化し、商標資源の放置と浪費を回避するとともに、既存の商標資源の有効活用を促進し、ブランド命名のためにより大きな余地を与える。
3.商標使用許諾契約のルールを整備し、第55条において、「被許諾者が品質保証義務を履行しない場合、許諾者は商標使用許諾契約を解除する権利を有する」を新設し、許諾者と被許諾者とにおける権利義務の境界を明確にし、被許諾者にある製品品質上の問題に起因する商標登録者の利益損害を防止し、商標使用に係る品質とブランドの信用を保障する。
4.商標代理業界を規範化させ、第66条及び第67条において、商標代理機構及び従業者がルール違反した情況を詳細化にした。即ち、代理機構による悪意登録の補助、利益抵触がある依頼の引き受け、法律書類の偽造など計6種類の行為に対して、最高20万元の罰金を科すことができ、情状が重大である場合は当該機構の商標代理業務の受理を停止する;従業者が自ら依頼を引き受け、同時に複数の代理機構で執業するなどの行為に対して、最高10万元の罰金を科すことができる。処罰基準の明確化+処罰の幅の定量化の方式によって、商標代理市場環境を清浄にし、業界の秩序を規範化させる。
五、登録商標専用権の保護:メカニズムの完備と保護力のグレードアップ
1.権利侵害行為への取締りの協同メカニズムを立て、第72条では、「登録商標専用権の侵害が犯罪に該当する疑いがある場合、商標法執行担当部門は適時にそれを公安機関に移送し、法律に基づき処理しなければならない;法律に基づき刑事責任の追及を要しない、又は刑事処罰を免ずるが、行政処罰を科すべきである場合、司法機関は適時にそれを商標法執行担当部門に移送し、法律に基づき処理しなければならない」と定めたとともに、関連部門の協力義務を明確にした。このメカニズムにより、「行政→司法」の連携協働の力を構築し、従来の法執行と司法の連携が円滑でなかった問題を解消し、権利侵害犯罪への抑止の効率と強度を高める。
2.悪意による訴訟の民事責任を明確にし、第78条では、「悪意によって商標訴訟を提起した者に対し、人民法院は法律に基づき処罰を与える;相手方当事者に損害を与えた場合、法律に基づき民事責任を負わなければならない」と定めた。例えば、ある企業が悪意によって他人の商標を先駆登録した後、却って被先駆登録者を相手取りに権利侵害を理由に提訴した場合、この悪意による訴訟行為に対して、人民法院の処罰を受けるばかりでなく、相手方の経済損失について損害賠償をしなければならず、これにより、訴訟権利の濫用行為を効果的に抑制し、権利行使と権利濫用の境界のバランスを取る。
3.懲罰的損害賠償の基準を詳細化にし、第74条において、「故意に登録商標専用権を侵害し、情状が重大である場合、権利者の損失や、侵害者が得た利益又はロイヤリティの倍数によって確定した金額の1倍以上5倍以下の範囲で損害賠償額を確定することができる」ことを明確にしたとともに、「権利者が権利侵害行為の制止のために支払った合理的な支出」を個別に損害賠償の範囲に取り入れた。定量化された損害賠償の倍率と個別に計上される合理的な支出により、権利侵害のコストを高め、商標権者の権利行使への保障を強化し、「権利行使コストが高く、権利侵害コストが低い」という課題の解決に寄与する。
4.正当な使用の情況を補足し、第70条では、「提供する商品の用途、適用対象、使用シーン等の情報を表示する、又は真の出所を表示するために関連登録商標を使用するにすぎない場合、登録商標専用権者は他人の正当な使用を禁止する権利がない(但し、混同を生じさせやすい場合を除く)」を新設した。このルールにより、表示的使用の合法性を明確にし、商標権者による過度の権利主張を回避するとともに、市場主体による合理的な使用の余地を保障する。
六、使用が禁止される標識の範囲:政治的シンボルに対する保護の強化
第15条では、使用が禁止される標識の範囲において、「中国共産党の名称、党旗、党徽、勲章と同一又は類似する」情況を新たに追加し、この種の標識と同一又は類似する標識を商標として使用してはならないことを明確にした。この修正により、重要な政治的シンボルに対する保護が強化され、党と国の知的財産権戦略の策定?実施と社会的公共利益の保護ニーズに対応するものとなる。






