2024/10/30 15:55:00
三友のクライアント:安克創新科技股份有限公司(Anker Innovations)
審理機関:国家知識産権局商標局、北京知識産権法院、北京市高等人民法院
裁判結果:出願商標が初歩査定された
案件の概要:
安克創新科技股份有限公司(以下、「安克創新社」という。)は2011年に設立され、中国国内で営業収益規模が最も大きいグローバル化消費電子ブランド企業の1つであり、スマート部品とスマートハードウェアの設計、研究開発、販売に専念している。2023年末の時点で、安克創新社は3899件の特許権を保有しており、そのうち、海外有効特許は251件、海外有効商標は139件であり、複数の国際大手電子商取引プラットフォームでトップの業界市場シェアを占めており、世界において高い知名度を有している。
安克創新社はブランド保護の必要性から、第31区分の商品において係争商標「ANKER」を登録出願した。国家知識産権局は、係争商標「ANKER」は「安加」と訳すことができ、類似商品において既登録された第11009252号「安加」(「引証商標」という。)商標と類似しているとして、『商標法』第30条の規定に基づき、係争商標の登録を拒絶した。
安克創新社はこの拒絶理由を不服とし、拒絶査定不服審判を請求した。国家知識産権局は審理によって、安克創新社の拒絶査定不服審判理由が成立しないとし、出願商標の登録を許可しなかった。その後、安克創新社は北京知識産権法院に提訴した。
争点:
本件の争点は、係争商標と引証商標とが文字の構成、呼称及び全体的視覚効果などの面において類似標識を構成しているか否かにある。
北京知識産権法院は審理において、以下の考えを示した。係争商標はアルファベット「ANKER」で構成され、引証商標は中国語「安加」で構成されている。中国の関連公衆にとって、「ANKER」はよく目にするような英語単語ではなく、それを特定の意味のないアルファベットの組合わせとして識別しやすい。「ANKER」には、「anker(酒の量を計る単位の名称)」の意味があるが、提出?収集された証拠に基づけば、「安加」は「ANKER」の固定した、またはよく目にするような中国語の翻訳文ではなく、係争商標が指定使用された植物など商品の関連公衆にとって、通常、「ANKER」と「安加」とを関連付けることがない。文字の構成、呼称及び全体的視覚効果などの面において比較的大きな差異があり、類似標識を構成していない。同種または類似商品に併行使用されるとしても、まだ関連公衆に商品の出所を混同、誤認させにくいため、係争商標は『商標法』第30条の規定に違反しておらず、国家知識産権局の被訴決定を取消す判決を行った。
国家知識産権局は一審判決に不服し、北京市高等人民法院に上訴した。第二審において、北京市高等人民法院は審理をし、北京知識産権法院の判決を支持し、国家知識産権局の上訴請求を棄却し、一審判決を維持した。
典型的な意義:
外国語商標と中国語商標の類否判断には一定の主観的要素があり、関連公衆の一般的な認識から、辞書、参考書などの公式出版物における中国語?外国語商標の意味及び指定使用された商品または役務に基づき、全体として、該商標が伝える意味と先行商標との類否を総合的に考慮しなければならない。通常の審理方法に沿う場合、この種の案件は司法実務において、法適用が無理に当てはめられ、機械的になりやすい。
本件を担当した三友の商標弁理士は、係争商標「ANKER」について《Oxford Advanced Learner's Dictionary》などの公式出版物、インターネット辞書で調べた結果、引証商標「安加」についてインターネットで調べた結果、外国語商標に対する中国における関連公衆の一般的な認識レベルと認識習慣を提供し、係争商標と指定商品との関係などの面から係争商標と引証商標とが指定商品に併存することは関連公衆に商品の出所について混同、誤認させることがないことを論証し、類似した情況の先行司法判例を列挙した。結果として、代理したクライアントの商標「ANKER」は許可登録された。
2024年4月、中華商標協会の主催で第三者認証機構が現場で評価し、専門家審査会での審査を経て、安克創新社の「 」商標は?有名商標ブランド評価規範?(T/CNTA 002-2022)の団体基準を満たし、「AAA有名商標ブランド」の認定に合格した。同年5月、中国ブランドデー(上海)活動期間中にそれに「AAA有名商標ブランド」証書と横額を授与した。
本件の審理と勝訴は、外国語商標と中国語商標との類否判定に係わる類似案件にとって一定の参考の意義がある。