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コラム
チップ分野における4000万元に係わる専利権侵害案件、法定賠償額の最高を更新

2025/11/24 13:27:50

一、案件の概要

原告である京〇ネットワーク会社及び京〇通信会社(以下、「京〇社」と総称。)は、名称が「キャビティ式マイクロ波デバイス」である発明専利の合法的専利権者である。同専利はマイクロ波デバイスに関するものであり、移動通信ネットワークカバレッジ分野における不可欠な重要な構成部分であり、その性能の優劣はネットワークカバレッジ全体の品質に影響を与えており、その重要性は言うまでもなく、比較的高い革新度と産業上の応用価値を有している。


被告である広東輝〇通信会社(以下、「輝〇社」という。)は通信機器分野の上場企業である。原告は、輝〇社が許諾を得ずに、係争専利の技術方案と同一または実質的に同一の複数タイプの製品を製造、販売していることを発見したため、原告の発明専利権侵害を理由に提訴し、法院に、輝〇社に対して、権利侵害行為の停止及び経済的損失4000万元の賠償を命じるよう請求した。


二、争点

当案件の主な争点は以下を含む。

1.権利者が損害を正確に算出できない場合、権利侵害者の得た利益に依拠して賠償額を確定できるか否か;

2.被告が上場企業として帳簿資料の提出を拒否した行為は、立証妨害を構成しているか否か;

3.法院が帳簿が欠いた場合、推定によって権利侵害により得た利益を合理的に確定し、法定賠償額の上限を突破できるか否か。


三、裁判の趣旨

案件の審理過程において、京〇社は、輝〇社が権利侵害行為によって得た利潤の規模を立証するために、輝〇社の落札公告、2017~2019年の財務年報、同業界における2社の上場企業の年報、専門家証人の証言などの証拠を提出した。同時に、原告は法院に、輝〇社に対して、その帳簿及び販売明細の提供を命じるよう請求した。輝〇社は上場企業として、第一審及び第二審の過程において、いずれも、「会社内部の是正」、「データクリーニング中」などを理由に、資料の提出を拒否した。


広州知識産権法院は第一審において、輝〇社が権利侵害を構成しており、かつ立証妨害が存在しており、不利な法律効果を負うべきであると認定した。「専利法」第65条に基づき、権利侵害者が権利侵害侵害によって得た利益を基に賠償額を確定することができ、かつ、上述した方法で酌定した賠償額は、法定賠償の最高限度額または最低限度額(1万元以上、100万元以下)の制限を受けない。


当案件において、法院は係争専利の技術価値が高く、社会経済効益が高く、それに重点をおいて保護を与え、科学技術の革新を奨励すべきであるとした。原告が提供した年報データ、平均販売利潤率(40%)及び専利価値の寄与率(60%)を総合的に考慮し、輝〇社の権利侵害によって得た利益が約5194.38万元であると推定し、最終的に、原告の4000万元の賠償請求を全額支持したとともに、直ちに権利侵害行為を停止するよう命じた。


輝〇社は一審判決に不服し、最高人民法院に上訴した。二審法院は審理を経て、原審で認定した事実が明白であり、法適用が正しいとして、上訴を棄却し、元の判決を維持した。


四、典型的な意義

1.立証妨害責任メカニズムを強化し、損害推定ルールを整備させる

当案件は、企業が是正、内部プロセスを理由に帳簿の提出を拒否してはならないことを明確にした。法院は、権利者が初步的証拠を提供した後、立証妨害ルールに基づいて合理的な推定を行うことができ、権利侵害の損害算定に実行可能なルートを提供している。


2.ハイテク専利に対する十分な保護を実現する

当案件に係わる発明専利は通信コア部品に該当し、技術革新度が高く、産業価値が高い。法院は、その寄与率と市場効益を十分に認定したことによって、高価値専利に対する重点的な保護と十分な救済を実現した。


3.法定賠償額の上限を突破した実践上のサンプル

当案件は、権利侵害によって得た利益の推定の基に、「専利法」で定められた法定賠償の限度額を突破し、知的財産保護分野における司法機関の価値主導型賠償理念を示した。


4.上場企業のコンプライアンス義務に対する制度上の警告

判決は、上場企業が専利訴訟においてより高い立証義務を負い、協力を拒否した場合、立証妨害の法律結果を負うことになることを強調し、業界内の企業に対して強いモデル及び警告の役割を果たしている。


当案件は、知的財産権損害賠償の算定と立証妨害の適用に関する典型的な案例である。当案件は、裁判理念において示範的な意味を持つのみでなく、運用のレベルにおいても、専利権者の権利行使のために参考できるルートを提供した。