2025/4/27 10:10:46
2025年4月号
1、INTA 2025、三友と共に米サンディエゴで過そう
第147回国際商標協会(INTA)年次総会は、5月17日から22日にかけて、米サンディエゴ?コンベンション?センターで盛大に開催される。この世界規模の商標業界の年度盛会には、各界のエリートが集まる。三友は12名のベテラン商標?特許弁護士からなる専門チームを派遣し、ブース番号は1843となる。ここで、世界中の友人達、同業者が三友ブースにお越しいただき、業界の関心事などを深く検討し、手を携えて新たな協力のチャンスを開拓していくのを真摯に歓迎している。
2、『渉外知的財産権紛争処理に関する規定』、2025年5月1日より正式に発効
中華人民共和国国務院会議は『国務院の渉外知的財産権紛争処理に関する規定』(以下、「本規定」という。)を可決し、公布した。本規定は、中国公民と企業組織が渉外知的財産権紛争を処理することを指導し、支援する一方で、中国で経営する外資企業の合法的利益を保護し、「ダブル循環」の新たな発展構造にサービスする法治的保障である。本規定は2025年5月1日より正式に発効する。
一、主なハイライトの解読
1.政府の職責区分の明確化:第2条-第6条 政府部門の渉外知的財産権紛争処理に対する「中央多部門協同+地方協力」の管理体制を確立し、国務院知的財産権管理部門、商務主管部門の主導的地位を明確にし、部門を跨る協同メカニズムを構築する。同時に、県以上の地方人民政府とその関係部門が具体的な紛争処理に責任を負う。
2.知的財産権政府サービスシステムの構築:第4条、第5条 国務院の知的財産権管理部門、商務主管部門などの関連部門に国外の知的財産権の法律宣伝とリスク警報メカニズムを確立するよう要求し、国内の公民と組織に正確なコンプライアンスガイドラインを提供することができる。第6条 国務院の関連部門に知的財産権紛争処理プロセスをさらに細分化し、国内の公民と組織に権利保護の援助を提供するよう要求する。
3.多元化紛争解決メカニズムの構築:第7条 革新的に商事調停組織、仲裁機構を導入して知的財産権の渉外紛争の解決に参与することは、シンガポール国際調停センター(SIMC)の成功経験と呼応する。訴訟と比較して、調停と仲裁は通常より低い費用とより短い時間周期を持っており、これは当事者のために時間とコストを節約した。
4.専門機関サービスの国際化:第8条 法律サービス機関の「出海」(海外進出)を奨励し、国外市場に支店を設立することを推進する。このような方式を通じて、中国の公民、組織が海外で業務を展開する際に法律援助をより便利に提供することができ、国の知的財産権イメージの向上にも役立つ。
5.業界内の知的財産権支援メカニズムの探索:第9条 関連保険業務の展開を奨励し、権利保護相互扶助基金の設立を支援することにより権利保護のコストを低減する。第10条 商会、業界協会、国境を越えた電子商取引プラットフォームなどの組織を奨励することにより、渉外知的財産権の権利保護支援プラットフォームを構築し、法律コンサルティング、権利保護戦略の指導を提供し、業界内資源を統合し、企業間の交流と業界の自律を促進し、業界全体のイメージを高め、国際競争力を強化することができる。
6.企業コンプライアンスガイドラインメカニズム:第11条 革新的に企業組織に「知的財産権海外コンプライアンスシステム」の構築を要求し、以下を含む:内部規制制度の健全化、専任知的財産権コンプライアンス官の配置、国外法律リスク評価制度の構築。同時に、第11条はまた、政府部門に対して企業の渉外知的財産権のトレーニングと法治宣伝を展開するよう要求し、「企業自律+政府誘導」モデルを通じて、中国の知的財産権保護レベルを高め、企業のグローバル競争における安定した発展を支援することを旨とする。
7.手続きの正義の維持:第12条は、自国の国内法に基づいて中国と締結または加盟すべき国際条約に従って、中国国内で文書を送達し、証拠調べを行うことを規定している。第13条は、国外に証拠または関連資料を提供する際に、法律、行政法規の規定に従うべきであることを規定している。この2つの規定は、知的財産権紛争に係わる公民と組織の権利保護行為に対して明確なコンプライアンスガイドラインを提出し、国家の安全、個人情報とデータセキュリティを確保し、手続きの正義を保障した。
8.貿易救済メカニズムの革新:第14条 「中華人民共和国対外貿易法」における知的財産権保護条項(第28条から第30条)を参考適用した。輸入権利侵害貨物の迅速な溶断メカニズム、知的財産権の許可による権利濫用の独占禁止審査、知的財産権保護の国際待遇の対等原則の設立によって、同法条は法執行部門に明確な操作基準を提供し、それが知的財産権に係わる対外貿易問題をより正確に判断し、処理することができるようにした一方で、企業は対外貿易において遵守すべき知的財産権規則をより明確に理解し、不明確による規定違反行為を回避し、法的リスクを低減することができる。
9.知的財産権の対抗メカニズムの創設:第15-16条 「知的財産権反外国差別的措置リスト」制度を創設し、これは『中華人民共和国反外国制裁法』の中国知的財産権分野における初運用である。このメカニズムは外国の一方的制裁を遮断することによって、企業の合法的権益を効果的に維持する。
10.知的財産権の安全審査:第17条 知的財産権と国家安全の連動審査メカニズムを確立し、国家安全を害する知的財産権行為に対して特別調査手続きを開始することを明確にする。また、同条は異なる行為に対して法的措置をとる根拠を明らかにした。中国の主権、安全を害するものについては、対外関係法、反国外制裁法に基づいて相応の措置をとる。知的財産権の濫用による競争の排除、制限、または不正競争行為を実施した場合は、独占禁止法または不正競争防止法に基づいて処理する。
二、外国企業への影響
外国企業にとって、本規定には以下のようないくつかの留意すべき法条がある。
1.第7条:今後国境を越えた知的財産権紛争の解決ルートが増えるため、多国の法律の適用に係わる可能性があり、調停、仲裁機構または司法手続きを通じて解決する必要があり、プロセスはさらに複雑になり、中国における各種解決ルートのプロセスをさらに理解する必要があり、コンプライアンス管理の難しさを増加した;
2.第12条:中国国内における文書送達、証拠調べについては、中国の法律規定を遵守する必要がある。そのため、中国の法律がよく分かるサービス機構に依頼して中国国内で文書送達、証拠調べすることを提案する。
3.第14条:中国企業と許諾契約を締結する際、外国企業は中国企業と平等に協議し、真実の意思表示に基づいて許諾する知的財産権を決定する必要があり、後期に許諾の紛争が生じないように、双方の協議の過程で協議の証拠を確保する。また、企業の所在国では、中国企業を対象とする差別的な知的財産権保護措置が発行されているか否か、中国公民、組織に対して国民待遇の原則が与えられているか否かに注目し、中国政府が発表した対抗リストと関連措置を適時に追跡し、ビジネス戦略を調整し、対等な報復による損失を減らす必要がある。
4.第15条、第16条:企業は外国政府に協力して知的財産権の差別的制限措置を実行してはならず、さもなくば、反外国差別的措置リストに記録される可能性があり、取引の制限や禁止、在中国資産の凍結、入国禁止などの対抗措置に直面するのみならず、中国公民や組織によって裁判所に訴えられ、高額な賠償リスクに直面する可能性がある。
3、三友がAnker Innovationの「Soundcore Glow」商標の識別性に関する抗弁案件を代理して勝訴
三友のクライアント:Anker Innovation Technology Co., Ltd.
審理機関:国家知識産権局
審判の結果:出願商標の不服審判商品における登録出願につき初歩査定する
出願商標の紹介:Soundcore Glow
(声阔)はAnker Innovation Technology Co., Ltd.(以下、「Anker社」という。)傘下のオーディオブランドであり、本件の出願商標「Soundcore Glow」は出願人
の携帯型無線ブルートゥーススピーカー製品ラインのサブブランドである。
背景紹介:
ブランド保護上の必要から、Anker社は第9類の商品において係争商標「Soundcore Glow」を登録出願した。国家知識産権局は判定を経て、『商標法』第11条第1項第(二)項の規定に基づき、Anker社による登録出願を拒絶した。拒絶理由として、該標識が指定商品に使用される場合、商品の機能などの特徴を直接表示しており、商標として登録してはならないことであった。
Anker社ははこの拒絶理由に不服したため、三友の商標弁理士に、国家知識産権局に拒絶査定不服審判請求の提出を依頼した。
法律条項:
『商標法』第11条第1項第(二)項の規定:次に掲げる標章は、商標として登録することができない。単なる商品の品質、主要原材料、効能、用途、重量、数量及びその他の特徴を直接表示したにすぎないもの。
代理の考え方:
出願商標につき、拒絶査定不服審判手続きにおいて抗弁する中心は、出願商標が「単なる」かつ「直接」商品または役務の特徴を表示したに「すぎない」ものでないことを論述するところにある。「単なる…すぎない」と「直接」は該条項の2つの適用要件であり、漸進的な関係を持つ。
まず、「単なる…すぎない」は前提として、出願商標全体が指定商品または役務の品質、主要原材料、効能、用途、重量、数量及びその他の特徴を記述しているか、またはその他の構成要素を含むが、これらの要素が識別的な特徴を持たないことを要件としている。
次に、「直接」は、商標全体が商品または役務の特徴を記述する方式が含蓄的、暗示的ではなく、中間物を経由せずに、商品または役務の特徴や属性を直接表すことを要件としている。
また、「単なる…すぎない」かつ「直接」を判断するには、さらに、商標が指定される商品または役務、関連公衆の認知習慣などの要素を合わせて考慮する必要がある。
本件では、不服審判において、三友の商標弁理士は主に以下の通り挙証し、陳述した。出願商標「Soundcore Glow」は造語であり、出願人によって独創されたものであり、指定商品の機能などの特徴を直接説明や記述をしておらず、極めて強い識別性を有しており、特にその前半部分である「Soundcore」が出願人傘下のコアブランドとして、出願人による長期間にわたる広範な宣伝と使用を経て、高い知名度とグッドウィルを蓄積している。そして、類似案例を挙げ、審査基準の統一性の原則に基づき、商標弁理士は、出願商標につき初歩査定すべきであることを請求し、結果として、国家知識産権局より許可された。
典型的な意義:
出願商標は、「単なる…すぎない」かつ「直接」という2つの適用要件を同時に満たさなければならず、即ち、全体として指定商品または役務の特徴を非暗示的に記述することが必須要件とされており、出願商標が直接的?記述的な部分的要素を含んでいるだけで、該標識が識別性を欠くと機械的に判断してはならない。さもなければ、出願人の合理的な期待と合法的権益を損なうことになる。
本件の審理と勝訴は、出願商標が『商標法』第11条第1項第(二)号によって拒絶され、拒絶査定不服審判において商標の識別性を抗弁する場合にとって、一定の参考がいがある。
2024年4月、中華商標協会が主催した第三者認証機構による現場評価及び専門家評審会による評審を経て、Anker Innovationの「」商標は『知名商標ブランド評価規範』(T/CNTA 002-2022)の団体基準に適合し、「AAA知名商標ブランド」として認定された。同年5月に、中国ブランドデー(上海)イベント期間中に「AAA知名商標ブランド」証書と銘板が授与された。